「金屋武」


バタンッ!!


おれはすぐにロッカーの扉を、勢いよく閉じた。


中から色摩美々の、「んーっ!んーっ!」という抗議の声が聞こえてきた。


・・・・・・何やってんだ、このアバズレ女は?


ロッカーを蹴飛ばしたくなった。
せっかく風宮とふたりきりになれたというのに。こいつのせいで、甘い気分が吹き飛んでしまった。


おれは風宮に聞いた。
「・・・・・・見なかったことにしないか?」


ロッカーがまた、ガンッガンッと音をたてた。


風宮は、苦笑しながら答えた。
「気持ちは分からないでもないけどさ、それはまずいよ」
「・・・・・・だな」
おれは重いため息をついた。
そして、ロッカーの扉を乱暴に開けると、中から色摩をひきずりだして、床に転がした。口にかまされた猿ぐつわを外し、縄をほどいてやる。


色摩は立ち上がると、ぐっと体を伸ばした。
長いストレートな黒髪に清楚な顔つき。一見、マジメな優等生のような外見をしているが、だまされてはいけない。こいつはとんでもない女なのだ。


色摩はのびを終えると、こちらを向いて笑った。
「いやあ、やっぱり、両手両足が自由に動かせるっていうのはいいものですね!金屋君、風宮君、おはようございます!」