もう陸上はあきらめた。
もう俺の中で終わったこと。
やっと忘れられた。
過去にできた。
なのに、どうして掘り返す?
俺は未央の持ってきた本を見て、気が重くなった。
「ごめん・・・・・」
俺は未央の顔を見ないようにした。
席を立ち上がる。
「こういうことしないでいいよ」
未央がきょとんとした。
「・・・・・・・・気持ちは嬉しいんだけど、ほんとに俺はもういいんだよ」
ほんとに、もういい。
俺が離れようとすると、未央が服のすそを引っ張って引きとめた。
「なに?」
未央は下を向いて複雑な表情。
俺の背中に『待って』と書いた。
俺はため息をついて、立ったまま未央がノートに文字を書き込むのを待った。