病院を出ると、もう夕日も沈みかけていた。

空がオレンジと水色と紫色にグラデーションされている。

「お前は明日ここ来る?」
未央が二回うなずいた。なぜか笑いが漏れてくる。
「おっけー。じゃあ俺も来るな」

さてと。
俺は未央に背を向けた。

「暗くなる前に早く帰れよー」

手を振って前に歩き出した。






その後突然、未央にすそを引っ張られた。




え・・・・?

何だ・・・・?



振り返れなかった。
未央が弱弱しい力で引き止めてる。


未央の指が俺の背中にふれ、線を描きはじめる。

なんだ・・・?


えーと・・・・
『あ』・・・?
『り』・・・・?



そこで俺は目を見開いた。



全部書き終えて、未央がばっと背中を離れて逃げていく。

走っていく背中に、俺は思いっきり叫んだ。


「どーいたしましてっ!!」


未央がいったん足を止める。


振り返って


柔らかく微笑んだ。




すごくすごく

可愛い笑顔だった。





『ありがとう』



確かに未央は、俺の背中にそう書いていった。



初めて

未央の気持ちに触れた気がした。