その病院の院長先生は、白髪の優しそうなおじいさんだった。

先生はすぐに治療してくれて、包帯でぐるぐる巻きにされた猫はさっきより弱っていないように見える。

先生の説明によると、血がたくさん出てしまったけれど命に別状はないらしい。
ただ足が折れているので、しばらく入院することになった。


未央はほっと息をつき、猫の頭を撫でた。
「良かったな」

そう言うと、未央は安心した表情になった。

院長先生が俺らの顔を交互に見た。

「このこは君達の猫かい?」

「あ・・・・」
俺は未央をちらっと見た。未央は首を振る。

知らない猫だったのか。


先生はうんうんとうなずいた。
「そうか・・・。首輪をしてるからきっと飼い猫だろうね。張り紙をして飼い主を探してみるよ。連れてきてくれてありがとう」
先生は、しわのある目じりを優しく細めた。


「あ、俺も手伝います」
未央も隣でうなずいた。
「助かるよ。ありがとう」
先生が嬉しそうに笑うから、俺も笑顔になった。

院長先生の雰囲気は何だか落ち着く。


「今日はこのこも弱ってるし帰ったほうがいい。早く洗わないと、それがシミになるよ」

先生に指を指されてはっとした。
俺の制服は、胸元に真っ赤な血がついてる。
さっき抱き上げたときについたんだ。


「ああ、どうせ汚れてるしいいっすよ」

笑って言った。

けれど、未央は心配そうな顔をしてハンカチを取り出した。
真っ白いハンカチを俺のシャツに近づける。

俺はちょっとびっくりした。
「・・・・っいいって。それが汚れるぜ?」

遠慮したけれど、未央は首を振った。


真剣な顔で
未央は俺のシャツの汚れを拭いた。








その顔を見たら



目がそらせなくなった。