「警戒心が解けたのは、野口だけじゃない。俺達へも、だ」
頬杖をついたままの丹野さんが、静かに言った。
俺の警戒心っていったい…
「この間、あの時起きた事件で完全に解けたんだろうな。
あの時、夜桜は逃げなかった」
「まぁ、その前から紫桜にはお前たちのことを話してたんだけどな」
笑いながらコメントを残す野口さん。
あんまり聞きたくない気がしてきた…。
「あの時、俺の魔力を抑えたの…誰?」
あの時の事件については、今は思い出したくない。
でも、ずっと不思議だったのが一つ。このこと。
相手に対して魔法を使った時、リミッターが外れた瞬間があった。
その時、魔力が暴走するのを抑える感覚を感じた。
俺じゃない。外からの、だ。
「いつもと同じ。丹野が紫桜のリミッター役になってる」
丹野さんがなんか横目でこっち見てる…。
前から、俺が意識しないうちから使えてくれていたのか?
『帝王』の才能が開花する器を。
「…ありがとう」
「え?紫桜なんか言った?」
野口さんは相変わらずな気がしてきた。
聞こえなくてもいいと思ったけど、俺は見逃していなかった。
丹野さんが眼を開いて驚いたことを。
そして、小さく笑ったことを。

