「藤村先生ってさ、本当に美人だし人当たりもいいし、
 インテリアコーディネーターとしてもすごい才能あるのに、
 なんであんなにメディア露出嫌がるんだろうね?」

「陽斗くんがいるからじゃない?
 やっぱり母子家庭だといろいろ詮索されるだろうし…」

「今じゃそんなにめずらしいことじゃないでしょ?
 そんなにマイナスにはならないと思うけど」





交差点で信号待ちをしていると、目の前の電光掲示板が切り替わる。

隣の女子高生が、黄色い声を上げた。



「見て!大河内瞬(おおこうちしゅん)!」

「めちゃくちゃかっこいいよね!水曜日のドラマ観てる?」

「もちろん!映画ももうすぐ公開でしょ?
 一緒に観に行かない?」

「行く行く~!」



あたしは、ぼんやりと電光掲示板を見上げていた。

信号が青になって、人の波に流されそうになっても

ただ、立ち尽くしていた。