「瞬、撮影押してるから、もう30分くらい待機しててくれ」

「うーっす」




マネージャーの村上さんが、それだけ告げると足早に控え室から出て行く。

俺は、持て余した時間を埋めるように、雑誌へと手を伸ばした。

村上さんは、俺のデビューのきっかけをくれた人だ。

劇団にいた俺に声をかけてくれて、ここまで育ててくれた。

デビュー当時から今まで、マネージャーも兼務してくれている芸能事務所の

れっきとした“社長”。

両親を早くに亡くしている俺にとっては、親代わりといってもいい。




3年前

俺は、売れない俳優だった。

大学に行きながら劇団に所属して、バイトしながらなんとか生活していた。

それを支えてくれていた、ひとりの女




「…どこにいんのかな」




ぽつり、と呟いた。