ゆっくりと、小さな子どもを諭すような瞳で郷御前は義経を見つめる。 義経は彼女の目に弱かった。 全てを見透かしてしまいそうな、全てを包み込んでしまいそうな。 まるで水鏡のような彼女の瞳。 その瞳に見つめられて隠し事が出来た試しはない。 「…静とは…ここで別れようと思っているんだ」 その一言に二人の間を一陣の風が吹き抜けた。 真っ直ぐと汚れを知らないような郷御前の瞳に見つめられ、義経は覚悟を決めたようにその重い口を開いた。 そして義経のその言葉に郷御前は目を見開く。