そう言ってゆったりと微笑む郷御前。

朗らかな彼女の表情に義経は何かを問うことはなく、ただ"そうか"と頷いて頬を緩めた。


しかし眉は申し訳なさそうに八の字に下がっている。

そんな不格好な笑みを向けられた郷御前もまた同じように八の字に眉を下げた。


彼女は知っている。

その表情がこの人の照れ隠しのようなものだということを。


そして彼もまた彼女のその表情が照れ隠しだと知っていた。


夫婦になって暫くになるが、二人の間には相も変わらず初々しい恥じらいが残っているのだ。