「やはり厳しいか…女の体で吉野の山を越えるのは…」




そう申し訳なさそうに呟いた後、義経はそっと郷御前の体に掛かっている薄い布を撫でる。


その手つきはまるで小さな幼子を撫でるように慈愛に満ちていた。


その指先を感じながら郷御前はゆっくりと体を起き上がらせる。

そして静かに義経と向き合った。


横になったままでいいと制する義経だったが、病気ではないのだからと郷御前が首を縦に振ることはない。




「いえ…もともと吉野は女人禁制に御座りますれば。通していただけるだけでも有り難いことです」