「静様も。何卒、お気を付け下さい」




少しばかり嫌味の込められたその言葉に、郷御前はしっかりと頷き微笑む。

そして去り行く静御前の姿が見えなくなるまで頭を下げ続けた。


その姿を見て義経は思う。

本当によくできた女だと。


きっと側室相手に頭を下げる正室はそういないだろう。義経自身聞いたことがない。


それをただ真心でしてしまうこの女をどうか最後まで守れるようにと、義経は改めて決意を固めるのだった。



そして強く互いの手のひらを絡め、二人は振り向かずに歴史を歩んでいく。







真夜中のプロミス
(郷、手を離すなよ)(はい。約束です)