そんな静御前の上から"すまない"という言葉が響く。

申し訳なさそうな声色が静御前に新たな傷を付けた。




(そんな言葉、いらない)




そんな情けのような言葉はいらないと。

きつく噛み締めた唇は血の色に染まってしまいそうだ。


そして静御前の視線は自然と義経の後ろに控える郷御前に向く。


悲しげに顔を歪める彼女が、いつも以上に憎くて仕方ない。


自分は今一体どんな顔をしているのだろうか。

そんなことを考える余裕もなく、静御前は郷御前の前に足を進めた。


そして



パシンッ



乾いた音が張り詰めた空気に響く。