彼の隣は、彼女の居場所。

それはきっと死ぬその時まで変わらないのだろうと静御前は思う。




(…酷い男)




彼は切り捨てることが出来るのだ。

己の信念と彼女の為なら。


それが例え、一度は愛した女であろうとも。




(勝てるわけ、ない…)




今もなお心配そうに顔を歪めている彼女に。

静御前の身を案じて泣きそうになっている彼女に。


いつまでも聡明な彼女に勝てるはずはないのだと、静御前はゆっくりと息を吸った。


きっとお腹の子のことを口にしても義経の心は、この決断は少しも変わらない。

そう理解した静御前はただその首を縦に振った。