静御前は知っていた。 彼がどれだけ正室である彼女を大切にしているのか。 あちらこちらと女にうつつを抜かし、しまいには静御前のような白拍子を一目惚れしたと妾にした義経。 しかし彼が郷御前を蔑ろにすることは絶対になかった。 どんな側室や家臣にも穏やかに微笑みかける郷御前がいつだって彼の一番だった。 今だってそう。 郷御前が一人狙われることのないよう、他の船に乗ったと嘘を吐き、彼女が彼女であることをわからないよう着替えさせて他の人を装い同行させている。 目の届くところに彼女を置いている。