「これ以上は、もう無理だ」 女の体で、この吉野の山を越えるのは。 そう言って義経は静御前との別れを口にした。 その瞳を悲しみに揺らすこともないまま。 強い視線で彼女を見つめて。 その言葉に眉を潜める静御前。 彼女の脳裏には、ある一人の女の姿が浮かんでいた。 いつも義経の後ろで彼を見つめている女の姿が。