確かにこの吉野の山を女の体で人知れず越えていくのは些か負担が大きいだろう。 しかしそれは郷御前とて同じこと。 もっと言えば、白拍子をしていた静御前の方が体力面では勝っているかもしれない。 だからこそ、それだけの理由では郷御前は納得することが出来ずにいた。 何故自分ではなく彼女なのか。 そんな想いがただただ沸き上がってくる。 ありありと不満を顔にする彼女に、義経は諦めたように溜め息を吐いた。 一瞬ちらりと眠っている静御前へ視線を向ける。 そして固く目を閉じた後、再び郷御前に向き直った。