重厚な扉の前に立つ。

シリウスさんには、少し離れたところで控えてもらっていた。

ドキドキする胸をぎゅっと押えて深呼吸をする。

なんだかとても威厳が感じられて、ノックするのも気後れしてしまう。

今、この中で、アラン様はお仕事してるのよね・・・。

音を立てるだけで怒られてしまいそうな、怖ろしい雰囲気が漂う。


叩いても、いいのかしら――――

こくんと息を飲んで、意を決して、扉に拳をあてた。



―――こん・・こん・・―――


しーんと静まりかえる政務塔の廊下。

中からも何も聞こえて来ない。

遠慮がちに叩いた音は思いのほか小さくて、アラン様のお耳には届いてないのかもしれない。

それとも、もうお仕事を終わっていて、中にいないのかも・・・。


お部屋に戻ろうか、もう一度ノックしようか迷ってると、テノールな響きが聞こえてきた。



「入るが良い」


扉を少しだけ開けて中を覗くと、アラン様は机に向かって書き物をしていた。

とても忙しそう―――


「―――アラン様?」

「――――ん?エミリー、どうした?遠慮せずとも、入るが良いと申した筈だぞ」

「はい・・・失礼します」

「もうすぐ終わるゆえ、そこに座って待つが良い」



アラン様に暖炉の前の椅子をすすめられて、素直に座る。

キョロキョロと見廻してみるけれど、あのツリーがどこにも無い。

もしかして、なくしてしまったの・・・?

とても忙しいのか、アラン様は一度もこちらを見ないまま。

やっぱり、お部屋で待ってた方が良かったかしら。

どんどん気分が沈んでいく。

俯けば、贈り物が入った籠が瞳に映る。

そこには、大きなものと小さなものが一つずつ残っている。

一つは渡せなかったパトリックさんのもの。

もう一つは――――



「すまぬ。待たせたな・・・その姿は“クリスマス”に関係があるのだな?」



手が冷たいな・・・、渡り廊下は寒かっただろう。

そう言ってわたしの手を握って立たせたアラン様の瞳に、暖炉の炎が当たる。

ゆらゆらと揺らめくそれを見つめながら言葉を探す。

たくさんお話することがあったはずなのに、全部忘れてしまった。


「・・・はい・・・あの・・・アラン様・・・?」

「――――ん、どうした?申してみよ」


「・・・わたし、今はサンタクロースなんです。皆さんに贈り物を届けていて・・・。だから、アラン様にも届けたくて、ここまで来てしまったの。お仕事の邪魔してごめんなさい」


「謝らなくとも良い――――して、贈り物とは何だ?」



・・・この姿、贈り物は君自身だと、思っても良いのか?