「失礼します」


 同じ階の使われていない空き教室に入ると、先生と向かい合わせで机が並んでいた。

 それに目を向けながら、先生に告げる。



「先生。私の進路はお伝えしましたよね?」


“だから話すことはない”と、目で訴える。

 ……が。先生も困ったように頭をかきながら、「とりあえず座って」と目の前の机を指した。


 ……また無駄な時間が始まるのか。



 壁に掛かった埃まみれの時計は、電池が切れたせいで狂ったまま。

 膝丈のスカートを少し持ち上げ椅子に座る私を、先生は緊張した顔で見ていた。


 生徒手帳に書かれたままの姿の私を、困ったように見つめる先生。

 私、問題児扱いじゃない?


 黒髪は二つに結び、分厚い黒縁眼鏡をしてる私はどう見ても優等生なのに。進路一つでこうも変わるのかと、目の前の先生を見て溜息が出る。

 それにビクリと反応する先生。


 ……私、そんなに恐いかな……