「先輩、今日はヒマですか?」


 一歩先を歩いていた彼が振り向き、笑顔で聞いてきた。


「ヒマ、だけど」

 部活は無くなったし、放課後の予定は真っ白だ。



「それなら、デートしましょう」


 私よりも高い位置にある彼の顔は笑ったまま。その姿に、歩く足が止まった。



「先輩この後用事無いんですよね?

 それなら、俺とデートして下さい」


 相変わらずの笑み。


 ……冗談……よ、ね?



 私達の会話が聞こえたらしい人が、ひそひそ話し始める。

 私はどう返したら良いのか分からず、ただ固まっていた。





「……ダメだよ。先輩をからかったら」


 その声を聞いた途端に、私の時間は動き出した。