雪を払い、「寒い、寒い」と口にしながらダウンジャケットを脱ぐ恭介を、私はぼーっとしながら眺めていた。

「おまたせ」

くるりと振り向き、彼はにっこりと笑顔を浮かべて私の手をぎゅっと握った。

「冷たい!」

「だって、お前がすぐにドアを開けないからだろ〜」

また少しだけ不機嫌な声で彼は言った。

「だって、こんな時間に誰かがくるなんて思わないでしょ?! 超怖かったんだよ!!」

「そっか。そうだよな。ごめん」

恭介はまたさっきの優しい笑顔で微笑むと、今度はその冷たい手で私の頬を包んだのだ。

「ちなみのほっぺ、あったかい」

「冷たいってば…」

「いいじゃん」

彼は、しばらくの間私の頬に触れていた。冷たい指先が、だんだんと暖かくなってくる。その体温を私は感じていた。

夢じゃない…

そう思うだけで、私の目の前はかすんでしまうのだ。