「手伝いというよりは仕事といった方が妥当じゃな」
「仕事な…。って何で人の手軋む程握りしめるんだ、超痛いぞ」
今、何故か天照大神が俺の右手を凄い握力で握りしめられている。
砕ける砕ける。マジ痛い。
「…あれ?痛みが弱まってる」
別に痛すぎて痛感が無くなった訳じゃない。天照大神の握りしめている力は変わっていない。
じゃあ、何でなんだ?
「ん、痛みが弱まったようじゃな」
「ま、まあな。何かしたのか?」
「したもなにも、ただわしの力を譲渡しただけじゃ」
譲渡⁈あんな握力勝負みたいなことでか?
「最高神だからの、譲渡など楽勝じゃ」
「まあ…方法についてはさておき、力を譲渡してまでしてもらいたいことってなんだよ」
天照大神は真剣な顔をして、
「わしの力を譲渡してまでしてもらいたいこと、それは”禍霊”の討伐じゃ」
禍霊⁈神の次は幽霊かよ…話についていけねぇ。
「禍霊って一体何なんだよ」
こほん、と天照大神が可愛らしく咳払いをする。長話をするつもりなのだろう。
「禍霊とはな…簡単に言えば神になれなかった怨霊で…」
とまあ、長くて難しい話をしているので俺なりに整理する。割愛したわけじゃない。

えーっと、禍霊って言うのは神になれなかった怨霊…ここは話したな。神になれなかった経緯は様々で、大抵は禁忌を破ったことによる罰。
禍霊というのは、自らが神ではないのでそいつ自身には力が無い。しかし、人の弱み、歪んだ願いにつけ込むことで禍霊の力は格段と上昇する。それに、禍霊は力が無いため感知しにくく、力を上昇させたときにしか発見する事は無理らしい。
人の弱みや歪んだ願いにつけ込むのは人間が弱いからでは無い。神になる候補者が神になるためには人の願いの手助けをすることが必要なのだ。だから禍霊となった奴らはまだ諦めきれていないのだろう。
んで、俺がこの禍霊を討伐&成仏させるのが天照大神の手伝い。
「…と言う訳じゃ」
「分かった分かった。良く理解できた」
おっそろしい程にな。
「そうか、ならばこれを持て」
と言って日本刀を投げてくる。勿論鞘にはいってるぞ。
「あっぶねぇ!いきなりなにすんだよ!」
「ありゃ、説明不足だったようじゃ、それはわしが以前使っていた剣でもある破邪と守護を兼ねた刀…”天叢雲剣”なのじゃ!」
こ、これが天叢雲剣…見た目は普通の日本刀である。重さは、全く感じない。流石神の世界の物だな。
試しに抜刀すると、刀身はほんのりと白く輝いていた。刀身の金属には一つも曇りが見えなかった。
「禍霊な…まだあんま実感はわかないけど倒してやるぜ!」
俺は天叢雲剣を軽く振りつつ、そう断言したのだった。