日本の今の季節は冬。一年が終わりに近づく季節でもある。どんどん降り積もる雪が純白に染めてゆく…らしい。
ま、ここは染めるなんてレベルじゃない。目の当たりが真っ白で家に帰れるか分からん程だ。これは言い過ぎか。
そんな豪雪地帯…八百万町。
「……あー、寒。まったく、冬は苦手だぜ」
俺は鼻声を出しながらしみじみと呟く。完全防寒にしてるはずなのに…
俺は、ポケットに入っていたカイロをさすりながら道を歩いていた。
俺は瀬多 十八(せと じゅうはち)よくじゅうやとか、とおやとか間違われる名前でもあるため、本名で呼ばれたことがない。一応、戸神高校というとこに通っている17歳。今日は土曜日なのだが、補修帰りなのだ。
「全く…こんな季節に補修とか、先生も鬼畜すぎだろ…」
歯をガタガタ震わせながらも歩き続けるしかない。今日は運悪く一段と風が増し、吹雪となる。とてもじゃないが耐えられない。
「うわぁ、寒すぎ…まずいな。神社に避難っと」
俺は急いで近くの神社に逃げこむ。ここ八百万町では非常に神社の数が多い。本当に八百万あるのではないかと言うくらいの多さなのだ。
「この多さが今日は助かる…おわっ」
神社に駆け込むと滑って賽銭箱の辺りで転倒する。これくらいかと思ったのだが、勢いは止まらず本殿の戸に激突する。痛たぁっ!頭打ったかな。
「痛てて…。あれ、待て待てこれってまずくないか」
今更気づいた。本殿に激突するなど、とんでもない事だ。
「何じゃ、いきなりドタバタっとー」
明るい声と共に本殿の戸が開く。やべっ、俺どうなるか分からないぞ…
「何だ、お主なのか?」
出て来たのは可愛らしい巫女装束で黒髪の少女。見た目は多分俺と同い年。
あ、そんなこと言ってる場合じゃない。
「はいっ、俺瀬多 十八がやりました!済みません!」
さっと土下座をして謝る。謝っても許されることではないだろうけど。
「成る程…じゅうはち、か。分かった、まずは中に入れ」
「…え、本殿ですよね、大丈夫なんですか?」
初めて本名を間違えなかったのに驚きつつ、巫女に尋ねた。本殿にはいるのはぶつかるよりも大変なことだ。
「大丈夫だ、この空間なら干渉したからの」
「な、何!干渉だと⁈そんなこと人間じゃ出来ねぇはずだ」
本殿の霊力に干渉となんて人間に出来る品物ではない。
「答えは簡単だぞ。何故ならわしは天照大神だからじゃ♪」
巫女…いや目の前の神様が堂々と答えは言った。
「な、天照大神?」


これが俺と神様との出会いだった。


「そうじゃ、わしが天照大神なのじゃぞ」
本殿に入ってまた巫女…じゃなくて天照大神が自慢げに言った。まったく、見た目は人間そのものなんだな。神様って…
「それよりも、本殿に激突した罰を与えねば…」
げ、そうだった。俺は今の状況を思い出した。相手は日本の最高神なのだ。本殿を壊していなくとも罰を受けるだろう。
流石に死罪は勘弁してくれよ…神様。
そう祈る俺とは一転、天照大神は何か考えていた。
「そうじゃ!お主!」
と急に笑顔で聞いてくる。
何だ、まさか死に方を選んでね☆的な展開にはならんだろうな…
「声は聞こえているようじゃが、姿は見えているのか?」
予想に反して違う質問が来る。
「あ、ああ、見えるぞ。此処に人間として実在しているかのようにな」
これは事実だ。だからこそ巫女かと思ったわけだが。
「そうか、分かった。いきなり済まんがここに名前を書け」
和紙と筆ペンを渡される。不思議には思いつつ俺はすらすらと自分の名前を綴る。
「これでいいんだろ、ほい」
俺は名前の描いた和紙を天照大神に渡す。
「ふむふむ…よし!罰は決めたぞ」
う、どうやら決まってしまったようだ。
頼む、死罪だけは…
「十八、其方の罰は…わしの手伝いじゃ!」
と俺の名前を書いた和紙を掲げて断言する。へ?手伝い?死罪じゃないからいいんだが…

一体、何をするんだろうか…