夏色の約束。~きみと生きた日々~



「あ、おちゃ……っ」

「なっちゃん……」

「うぅ……っ、っく……」


なにをするわけでもなく、ただ泣きじゃくるなつを、あおちゃんは困ったような顔で見つめる。


あおちゃんを困らせたくない。


病気で苦しんでいるあおちゃんを、なつが笑顔にしてあげたい。


そう思ってるのに、なつの目からは涙しか出てこないの。


「……なっちゃん、ここ、おいで」


あおちゃんは、そっと笑みをこぼしてなつに両手を広げた。


だからなつは、点滴にあたらないようにそーっとあおちゃんに抱きつく。


そのままぎゅーっと手に力を込めると、あおちゃんが優しく頭を撫でてくれたのが分かった。


「ふぅ……っ、ひっ、く……あ、おちゃ……っ」

「なっちゃん」

「寂しかった、よ……っ、つら、かったよ……」

「……ごめん」

「……なつ、あおちゃん、が、いないと……っ、うぅ……っ」


ねぇ、あおちゃん。


なつね、やっぱりあおちゃんがいないとダメなんだ。


なつはあおちゃんがいないと、生きていけない。


これって、大袈裟かな。


なつの、ただの勘違いなのかな。


……でもね、あおちゃん。


この時、なつは思ったの。


なつたちは、“ふたりでひとつ”なんだって。


どっちかが欠けたら、なつたちふたりは成り立たないんだって。