「……大丈夫よ、菜摘ちゃん。大丈夫」


その時、ふわっとした心地よい風が吹いて、やわらかな温もりがなつの体を包みこんだ。


……え?


一瞬、なつの周りを刻む時間が全て止まった。


なつを抱きしめているのは、あおちゃんのお母さん。


「……私も、同じことを聞くわ。菜摘ちゃんはあの日、碧と一緒に海に行ったことを後悔してる?」

「……なつは、してません。だってあの日、あおちゃんが亡くなる直前まで。大好きなあおちゃんと一緒にいることができたんです。“ありがとう”って、“大好き”って、伝えることができたんです。だから……っ」


“後悔はしてません”


震える声で、なつははっきりそう言いきった。