だから、あおちゃんが望むことはなつが全部叶えてあげる。
あおちゃんのお母さんが言っていたように、大切な人の願いは全部全部叶えてあげたいから。
なつはそんな想いを込めて、あおちゃんの唇に自分の唇を重ねようとまぶたを伏せた。
───だけど。
なつの唇に触れたのは、温かいあおちゃんの唇ではなかった。
「ヒュー、ヒュー……」
この、独特の呼吸音。
今でもまとわりつくように耳に残ってるから、はっきりと分かる。
「あおちゃん!?」
なつはすぐに目を開けて、口元に触れていたあおちゃんのおでこを上げさせる。
「碧くん!?ちょっと待ってね!すぐに救急車を呼ぶから……っ」
血相を変えて慌てて駆けよってきたお母さんが、ものすごい早さで携帯を操っていた。



