「先生」


あおちゃんはそんなお父さんを見て“ありがとう”って言ったあと、病室の入り口に立っていた先生に目を移す。


「先生。俺、頑張るよ。病気なんかに負けない。負けてたまるか」


そして、そう強く言い切った。


なつは涙を必死にこらえる。


「だって俺には、“なっちゃん”っていう大切な人がいるから。どんなことをしてでも、守らなきゃいけないものがあるから」


………ああ、もう無理だよ。


もう泣かないようにと必死にこらえていた涙は、無情にもなつの頬を伝って顎へ伝い落ちていく。


「まだ泣くの?」


そう言うあおちゃんに笑われたけど、これは違うんだよ。


悲しくてつらい涙なんかじゃない。


嬉しくて、幸せな涙なんだよ。


あおちゃんのくれた言葉が、とてもとても温かくて、嬉しかったの。