その暖かさは、膝の痛みを吸い取って行くようだった
じんわりと痛みが和らいでいった
白い紅葉のような手を離すと、温もりは消えたが、代わりに傷ひとつない綺麗な膝が見えた
「これでいいだろう」
「すごい!!」
「朝飯前じゃ」
「どうやったの?」
「秘密じゃ」
女の子は、くるりと背を向けると、去って行こうとした
「待って!」
「お主が早く来るのじゃ、森を出るぞ」
どうやら、森から出て行こうとするだけだったらしい
(もう会えないかと思った)
変な勘違いをした自分が恥ずかしくて、大きな声を上げた
「お主じゃない!僕は翔太だ!」
すると、女の子は首だけこちらを振り向いた
「ほう、翔太か、いい名じゃの」
びっくりするほど切ない表情
切ない声
そして、綺麗な笑顔
それすらも、切ない
「翔太、妖に真名を知られることが、どれだけ恐ろしいことか知らんじゃろう」
ギリギリ聞こえる声で、つぶやくように言った
それが言葉だとわかるのにしばらくかかった



