そして懐をゴソゴソと探る

取り出したのは、細身の黒い煙管だった

火をつけてもいないのに、すぅと細い煙が上がる

「ふぅ、やはり寝起きの煙草は格別じゃの」

深くため息をついて煙を吐き出す

数分だろうか、数時間だろうか、もしかしたら数秒かもしれない

満足するまで吸ったのか、煙管の灰を地面に捨てる


「さて」

石の上から飛び降りる


「あぶないっ!」

いくら低いと言っても、僕の身長ぐらいはあるんだ

死ぬまではいかないかもだけど、あんな細い体じゃ怪我をしてしまう


着地するであろうところに滑り込んだ


「小僧、何をしている」


その声と同時に、小さな動物かなんかが背中に乗った感触がした

「よいしょっと」

どうやら、女の子らしい

驚くほど軽かった

それにまるで、タンポポの綿毛が地面に降りるようにふわりと降りてきた


「あれ、怪我してない?」

「阿呆が、霊体の私が怪我などするはずがなかろう」

霊体........

幽霊ってこと?

え、だって、足あるし、透けてないし


「お前の見鬼の才は素晴らしいのう、私を人の子と見分けがつかぬほどに感じられるとは」


僕の慌てっぷりがおもしろかったのか、
くつくつと笑いながら話す


「うるさいなぁ......いたっ」

「おやお前、怪我しておるの。ちと見せんか」

笑いが止まり、少し心配したような顔をした

体勢を変えて、膝を見せた

僕の膝は、泥で大きく汚れていた
そして、その泥の中には真っ赤な血と、薄ピンクの肉が見えた

「派手にやったのう」

そして、真っ白な手を差し出して、僕の膝を包み込む

するとそこが暖かくなった