すると、地面から銀色の光を帯びたものがふわりと薄い布のようにめくれ上がった


あれはなんだ

それが消える前に触れようとした


「小僧、それ触れるでない」


頭上から唐突に降ってきた声に驚いた

驚いて、触れようとしていたそれから手を引いてしまった

その瞬間には、その布は空気に溶けて消えた


「あ」

綺麗なものが消えてしまって、悲しい気持ちになった


「なんだ小僧、哀れんでおるのか?」


さっきと同じ声が上から降ってきた

見上げると、大きな石の一番高いところに僕と同じくらいに女の子が座っていた

落ち着いた紫に鈍い金の刺繍が施された、一見派手に見えそうだけど、そうでもなく落ち着いた色合いの着物を来た女の子

髪型はおかっぱ


しかし、女の子が醸し出す古めかしい雰囲気に、それは子供らしさの象徴ではなく

心だけ成長してしまった大人のような印象になった

「黙っとるでない、私が問うておるのじゃ」

色白で、薄く色ずいた形のいい唇を動かして喋った

先月、お父さんと観に行った鉱石展で見たコクヨウセキに似た深い輝きを持つ瞳が僕を見つめる

「これ、私は哀れんでおるのかと問うたのだ」

「あわれんで?」

「悲しいということじゃ」

「う、うん」


僕が頷くとその女の子は不機嫌そうに鼻を鳴らす


「いいか小僧、美しいものほど毒があるのじゃよ」


(それじゃあ君にも毒があるの?)


その問いが口をつきそうになって慌てて口を閉じた