『まもなく、終点、枯滝(からたき)です』
滑舌のいいのか悪いのかわからない車掌の声で目を覚ます
景色はすっかり田舎だった
短く育った稲を囲む同じ色のあぜ
見渡す限りの田んぼだった
僕は慌てて降りる準備をする
すでに乗客は僕しかいなかった
ひとりぽっちで電車から降る
電車は出発するわけでもなくそこに止まっていた
駅は綺麗に無人駅だった
雨くらいはしのげるだろうという申し訳程度の屋根
周りには長い草が生えている
屋根のしたをくぐって道路に出るが当然舗装はされていない
「あんた、翔ちゃんかい?」
突然日陰の暗闇から声がした
その声の主に見覚えがあった
「そうだよ、おばあちゃん」
前に来た時よりも随分と小さくなった祖母だった
「おぉ、大きくなったね翔ちゃん」
そう言って優しい笑顔を浮かべた
年をとっているがしっかりした足取りで僕の前を歩く
時々後ろを振り返って、僕に他愛もない話をする



