少女視点

私には、とても良くしてくれる姉のような側近がいた。
彼女はとても優しくて大好きだった。

あの夜私は彼女に呼び出された。
「相談したいことがあるんです。誰にも聞かれたくない。だから誰にも見つからないように・・・」

    -来てー

私は薄々気づいてた。
彼女が何かを隠している。
私に見せる笑顔が本物ではないものに。


最近、彼女のその偽物の笑顔が時折苦しそうな悲しそうな顔になることを知った。

(あー、近いのかな、今回は誘拐か殺されるかどっちだろ)

私の家はマフィアだから恨まれるのが当たり前。
彼女も理由があるのだろう。
私は彼女が大好きだ。
優しくしてくれたことも時々見せるその真の笑顔も。


彼女の言う通り私は家を抜け出して彼女と約束した公園に着いた。

彼女は
「人に聞かれない私のとっておきの良い場所があるんです。着いて来てください。」

と言ったから私は何も言わずに彼女に着いて行ってたんだ。
だけど歩いていくうちにだんだん薄暗い所へ近づいて行ってた。
途中で何か話しかけようと思ったけど、無言で、いつもとは違う雰囲気の彼女に話しかけることは出来なかった。
そのうち路地のほうに連れていかれると彼女は何か気づいたのか突然立ち止まり私に
「少し隠れておいて下さい。」
と言った。

私は言われた通り物陰に隠れて見ていたら
突然彼が現れたんだ。

月光に照らし映された漆黒の黒髪。
まるで闇に溶け込んでいるかのよう。


そして、

彼は彼女を殺した。


(あーやっぱり彼女は私を狙ってたんだ。彼は家が雇った殺し屋か何かかな。)

私は光の下へ出た。

彼の金の瞳が私を映し出す。

私は聞いたんだ。

あなたはだれ?

なんで彼女を殺したの?って。

馬鹿馬鹿しい、そんなの分かりきっていることなのに。

答えてくれるわけがないことを知っているのに。


(さあ、彼はこの後どうするんだろう。逃げる?それとも私を殺す?ついさっきの様に。)









すると、彼は優しく私の頭を撫でたんだ。

ごめん、と言う優しすぎる一言と共に。


今まで我慢してたのに、
いつもと同じ、ただ側近が私を狙ってただけなんだ、って思い込もうとしてたのに・・・

なんでそんなに優しいの、

なんでそんなに悲しそうな顔をするの。


次から次へと目から涙が溢れてくる。
今まで我慢していた涙が止めどなく頬を伝う。

「私を殺さないの?」
そう聞くと
「殺しは仕事だから」
と彼は答えた。

私は泣いた、泣いて泣いて泣いた。


気が付いたら私は自分の部屋にいた。

きっと彼が運んでくれたのだろう。



側近は代わった。