真冬のある夜のこと。
その日はとても空気が澄み渡り星々が輝いていた。
そしてその美しい星々と反して町の路地は闇のように暗くひっそりとしていた。
そんな路地の一角で突然断末魔の様な女の叫び声が上がった。

「きゃあああ」

「黙れ。」

グシャ

再び闇のような静寂が辺りを包み込んだ。






今日の仕事はこれで終わりだった。
路地を去ろうと背を向けたその時・・・

カサッ

何かが動くような音がした。
男は振り返った。
そこには一人の少女が・・・。
その姿は声にならない程美しく妖美だった。

月明かりに照らされて見えたのは
赤い血で出来た大きな花弁を所々に散らせた純白のワンピース。
そこから伸びるのは白くほっそりとした長い手足。
金を紡いだような腰あたりまである美しい髪。
そして日本の桜のようなピンク色の小さな唇と
翡翠のような鮮やかな蒼の瞳だった。

「・・・。」

「あなたは誰?」

突然少女が喋りかけてきた。

「なんで彼女を殺したの?」

少女はこの状況を怖がらないのか。
いや、怖がらないはずがなかった。

「依頼された。」

そう、俺は殺し屋だから。

「っ・・・」

君を怖がらせるような回答しかできないんだ。

「彼女は私の大切な大切な側近だった。姉妹のように仲良くしてくれた。
大好きだった。」

ごめんね、
でも、彼女は君の命を狙ってた。
俺に彼女を殺すように依頼したのはお得意様でありこの国一を誇る超大型マフィアのボス、君のお父さんなんだ。

なんて・・・言えるわけないから

「ごめん・・・」

ただそれくらいしか言えなくて

だからそっと君の頭をなでたんだ。