"好き"



「ほんとにいいの?」

きいが聞く。


きっと、俺が真が言ったこと、ひいては、きい達が考えたことに流されているだけなんじゃないかと、不安になったんだと思う。


俺は大きく頷いて言った。

「あぁ。意識的に考えたことは無かったけど、結構前から分かってたんだ、たぶん」


「…ならいいけど。
納得いってないなら、軽はずみなことはやめといた方がいいわよ?」


笑いが込み上げてきた。

きいがそれを言うか?


「大丈夫。ココよりは腰は軽いけど、きいよりは重いから」


「なっ!ひどいよ!!」


暴れるきいをスルーして、俺は荷物をまとめる。


「じゃ、今日は帰るな」

「うん、分かった。またなんかあったらうち来てね」

「おっ、ココの口からそれを聞けるのはレアだな」


そんな軽口を叩きながら玄関を出る。


「じゃ、またな」

俺は軽く手をあげ、1人、薄い雲のかかった空の下を歩いて家路についた。