いつものように、ガラッとその扉を開く。


「らっしゃーい!」


暖かい空気と声が私を包み込んだ。

あぁ、やっぱりここが一番落ち着く!

時間のせいか、今日という日のせいか、目に写る光景はいつもと全く違っていた。

いつもはサラリーマンで溢れ返っている店内は、人っ子一人いなく、ガラリとしていた。


「こんばんは~」

「あれっ、二宮さんじゃないですか!珍しいですね。こんな時間に来るなんて」

「たっぷり残業させられちゃったんですよー。こんな日に……いや、こんな日だからこそ、独り身の私しか頼めるヤツはいないって!もう、残念な感じです!」

「ははっ、それはお疲れ様でした~」


相馬軒の店主……シンさんに、ほわっとした笑顔が浮かぶ。

私はいつもこの笑顔に癒されている。

シンさんの笑顔を見ると、その日にあった嫌なことも疲れも、全て吹っ飛んでしまうんだ。

相馬軒のラーメンはどのお店よりもおいしくて大好きなんだけど、それ以上にシンさんの笑顔があるからここに来たくなるんだと思う。

……この温かい場所に帰りたくなる。