チリンチリン
可愛らしい鈴がなり、同時に
「いらっしゃいませー。」
という声が響く。
白とクリーム色を基調とし、ところどころにピンクなどのカラフルな装飾が施されている。
でも、私が気になったのは、「女子高生」。
良くも悪くも、学年では顏の知られている私。
こんなとこ…見られたくない。
ねたにされる。
「…どうしたの?席に案内されてるよー」
はっとして、微笑み返す。
「可愛いので見とれちゃいました、はは!」
あいつらは…麗菜だちはいないようだ。
壁側の席に着くと、店員さんがメニューを置いて席を離れた。
「ここ、きたことないんだよね…」
「そうですけど…?」
なんだか今日、先輩がおかしい。
メニューを眺める先輩の、長いまつげが揺れている。
私も決めなきゃ。
メニューを開くと、
「げ…」
思わず声が漏れる。
値段が高い。
いや、普通の学生なら、お気遣いの中からすんなり出せる額だろう。
しかし、私のお財布事情からすると厳しかった。
迷いに迷って、一番安いショートケーキにする。
ドリンクは頼まない。
「決まった?」
「あ、はい!」
待たせてたみたいで、少し申し訳ない。
店員さんを呼んで、彼が注文する。
「えっと、俺はサヴァランと、ブラックコーヒーで。」
サヴァラン。ラム酒の香りが強いケーキだ。
それにブラックコーヒーとは、強者だな…
「私はショートケーキだけで。」
うわ、なんか子供っぽい。
「あ、それとオレンジジュースもお願いします。」
「え?」
思わず声を上げてしまった。
「へへ、俺の奢りなっ!」
いたずらっぽく微笑む先輩は、めちゃくちゃかっこいい。
「あ、ありがとうございます…」
気を使ってくれたんだろう。
ショートケーキにおごりのジュース。
かっこわるいな…。
「ショートケーキにオレンジジュース、なんか可愛いね。あ、俺が勝手にオレンジジュースにしたんだった!」
一人突っ込みかよ!
思わず笑ってしまった。
「やっと笑ってくれた。」
「え…?」
「俺といる間、全然笑ってなかったから…つまんなかったのかと思った。」
また気を遣わせてしまった。
「いえ!楽しいです!すっごく!」
手をぶんぶん振ると、手が壁にぶつかってしまった。
「いったぁー…」
「ははっ、今のおもしろかった!」
「先輩、ひどいですよ…先輩も試せばわかりますよ」
手をさすりながら少し嫌味を言ってみた。
「ふふ、い、や、だ✰」
語尾に今星ついたよね?
先輩といると、いつもよりもリラックスできる。
両親のことが頭から離れないわけではないが、今はこの幸せに浸りたかった。
