「住む?」
馬鹿なオレには、
この短時間ではよく理解出来なかった。住む。
『うん住む!!良太兄の家の方が楽器部屋広いし、
それに色んなバンドの人とか来るでしょ?
私、色々と勉強したいことあるからさ…』
「そういうことなら。ええよ、住んでも。
でもなつの、おかんにええって言われたん?」
『あっ』
許可を取るのを忘れていたようで、あっと声を上げた後に
ふふっと笑った。オレも笑った。
なつのはしっかりしているようで、どこか抜けている。
『じゃあ今日、帰ったら聞いておく!あ、バスきた。
そんじゃあまた明日の、この時間に電話する!』
「おう!ちゃんと許可取るんやぞ」
バスのエンジン音がしたのを最後に、電話はぷつんと切れた。
その途端、現実の世界に引き戻される。
「良太良太、何やったん?」
電話が切れたのを確認すると、
すぐさまともくんが飛びついてきた。
「なつのがオレん家に住むかも」
「えーじゃあおれ毎日遊び行くわ!」
まだお茶が半分以上残っているペットボトルをぶんぶん振るともくん。
ペットボトルの中身は泡立って、なんかビールみたいに見える。
ああ、ビール飲みたくなってきた。
「おっ、ビールやん」
と言うともくんに、「お茶や」とツッコミながらも笑う。
しばらく2人でビールの話をしていると、
貴が「休憩終わり」と呼びに来た。
オレ達2人は、終始ビールの話をしながらスタジオに戻った。
