階段を上がると、開かない屋上への扉が見えた。
そこから日差しが差し込んでいて、背を向けて座ると背中が暖かかった。
自動販売機で飲み物を買ってこようとも思ったけど、そもそもお金を持っていないことに気づいて諦めた。
「…気、つかわせてごめん」
「いいよ」
申し訳なさそうに俯くももの頭を撫でながら笑った。
なんでこんなに気をつかってくるんだろう?
いつもももは、1歩引いて俺に接してくる。
壁を作られていて、これ以上先に踏み込ませてくれない。
それを改めて意識した。
「なんでもないの。少し気分が悪くなっちゃって…」
ほら。
わかりやすい嘘をついて笑うんだ。
「なんで嘘つくの」
理由なんて簡単か。
俺が頼りないのと、俺のこと信頼できてないからだ。
俺の質問に答えようとせず、曖昧に笑ってまた俯くもも。
何か言いたそうで、言えないような
そんな感じ。
残りわずかに残された距離が広くて、深くて
暗闇の中にずっといたい。
ももからはそんな気持ちが汲み取れた。
「…もも」
「ん…?」
「嫌なら言わなくてもいいよ。けど、辛いなら一人で抱えちゃダメだ」
俺がなんとなく気づいていることに
ももは気づかないふりをしているのか、ホントに気づいていないのか…。
ももは笑うのをやめた。
「…最初から最後まで引くような話だよ?」
震える声は弱々しくて、か細い。
閉じていたももの心は、消えそうになりながらも必死に言葉になって俺に届いた。
「なら、初めから1歩前に踏み出して聞くよ。それなら、引いてもプラマイゼロだろ?」
そう言って笑うと、ももは泣き笑いをした。

