兄ちゃんとは、あれからキス以上のことなんて起きてない。
一緒に寝るけど、兄ちゃんは何もしてこないし俺も何もしない。
まだ少し、待っていてほしい。
もう少しして決心がついたら、自分から兄ちゃんに言うつもり。
…しよ?って言うのかな?
「って、なに考えてんだよ…」
「何が?」
顔をあげると、目の前に
「うわぁっ?!!!?!!」
秀兄ちゃんが不思議そうに俺を見ていて
俺が驚くと秀兄ちゃんも跳び跳ねて驚いた。
衣替えしてから秀兄ちゃんを見るのは初めてだ。
「そんなに驚くなよ!」
「なんでここにいるの?!」
「ここ俺の学校。ここ廊下。これ、会っちゃおかしい状況?」
笑いながら聞いてくる秀兄ちゃん。
…まぁ、確かに。
何も不自然じゃない。
周りを見ても、兄ちゃんはいなかった。
てっきり、兄ちゃんも一緒かと思ったんだけどなぁ…。
そんな俺に苦笑いした秀兄ちゃんには俺は気づかなかった。
授業の合間にある10分休みは短い。
なのに、わざわざ会いに来る?
秀兄ちゃんの教室があるのは3階。
2階は3年生。
で、ここ1階が1年。
なんとなく、嫌な予感。
「今日さ、放課後手伝ってほしいんだ」
「は…?」
「生徒会♪」
ほらな。
嫌な予感的中。
秀兄ちゃんのことだから、どーせ仕事後回しにしてたら貯まっちゃったんだろう。
秀兄ちゃんはやる気がないときはホントに何もしない。
オンとオフの差が激しすぎるってゆーか…。
同じ副会長の華恋は大変だろうな…。
「まぁ、いーけど…」
「やった♪じゃ、印刷室で待ってるから!」
またなっ!と言って、秀兄ちゃんは階段をかけ上がっていった。
…俺、生徒会と無関係のはずなんだけどな…。
なんて愚痴は、誰にも聞かれずに俺の心の中で消えた。