「むっっちゃ可愛い!!!!!」





……


………は?


思いっきり肩を掴まれて、顔をものすごい近づけられる。


周りには男。


男、男、男、男。


集団リンチされているようだ。


…なんて、呑気に周りを見ている場合じゃない。


俺の脳裏に、昔からのトラウマの数々が過る。


…ヤバイ。


頭の中で警報が鳴り響く。


けど、掴まれてるから動きもとれない。


逃げ場はない。


もう、どうすることもできない状況。


…ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!


「っ、離せよ!!」


ジリジリと近づいてくる男達。


キモイ。怖い。


反射的に


俺の右手は目の前の肩を掴んでくる男のみぞおちを思いっきり殴った。


「ぐっは…!!」


男は床に膝をついて腹を押さえる。


…今しかない!!


俺は体制を低くして、男達の足の間をすり抜けて2階へ向かって走り出した。


「あっ!!おいっ!!!」


後ろから、男達が全力で追ってくる。


こーゆーことが毎年あるせいで、俺は足がめちゃくちゃ早い。


兄ちゃんのクラスへ向かって、俺は階段を駆け上がって


「わっ」


前を見るのを忘れて、目の前に立っていた人に突っ込んでしまった。


「すみませ……兄ちゃん!」


「え、李桜?!どーしたんだよ?」


俺は急いで兄ちゃんの影に隠れる。


兄ちゃんは戸惑いながらも、ブレザーにしがみついた俺の手を握った。


「あっ!いたぞ!!」


バタバタと階段を上がってきた男達の声に、俺の肩がビクリと跳ねた。


…そんな反応をした俺を、兄ちゃんは見逃さなかった。


ぐっ、と俺の手を握る力を強めて、兄ちゃんは俺を完全に男達に見えないようにした。


「俺の弟に、なにしてんの?」


兄ちゃんの低い声に、空気が一瞬で凍りつくのがわかった。