俺はずっと、兄ちゃんに憧れてた。
頭が良くて、優しくて、料理はちょっと下手だけど、面倒見がいい。
俺の自慢の兄ちゃんだった。
でも、できた兄を持つのも苦労するんだ。
俺なんて、気づいたら兄ちゃんしか見えなくなってた。
憧れは、ゆっくりと変わって
俺の中で兄ちゃんが特別になって
…たぶん、ずっと好きだったんだ。
兄ちゃんの傍にいたくて、勉強頑張って同じ高校へ入学した。
ずっと、ずっと
兄ちゃんの特別になることを望んでいた。
「好きなんだ」
冗談だろ?
そう言って、流すべきなのかな?
だって、こんなこと
本気で言うわけないだろ。
兄ちゃんが冗談嫌いなのは知ってる。
でもこればっかりは
どう考えても冗談だ。
「兄ちゃん、熱でもあるんだよ。ちょっと疲れてる?それか、お酒でも飲んだの?」
「真面目に聞いて」
兄ちゃんの腕が腰に回る。
苦しいくらい抱き締められて、身体の熱が伝わりそうで
逃げたいけど、抵抗しても離してくれないし…。
俺の頭の中はパニック。
もう、何をどうしたらいいのかわからない。
とりあえず、逃げたいんだ。
冷静になりたい。
なのに…
「俺は本気だよ、李桜」
兄ちゃんは、なんでそんな顔で俺を見てくるの…?
「やめろよッ!!」
兄ちゃんの腕をかなり無理矢理剥ぎ取って、俺は兄ちゃんから離れた。