「早めに言えば?取られたら勝ち目ないし」
軽く笑いながら言ってきた秀都を睨み付けると、こわーいっ!とか言って華恋のほうへ逃げた。
…早めにか。
いつもの別れ道で、俺は右、華恋達は左へ曲がって手をふった。
「ただいま」
家に帰ると、李桜が夕食を作っていた。
胡椒の香りがするから、野菜炒めでも作ってるんだと思う。
「お帰り、兄ちゃん」
エプロンは黒。
去年の李桜の誕生日に、俺がプレゼントした。
秀都とふざけて、ピンクのフリル付きエプロンにしようとか言いながら選んだのを覚えている。
絶対着てくれないだろうと思って諦めた。
「兄ちゃん、なんか機嫌いいね」
出来上がった料理を一通り運んできた李桜が、俺の前に箸を置きながら聞いてきた。
「まーな」
俺がそう言うと、李桜は俺を軽く睨んだ。
…なんで?
プイッと顔を背けた李桜を
「わあっ!!?」
無理やり引き寄せて、膝の上に乗せた。
いつもならこんなことしないけど、もう遠慮はしない。
早めに、って秀都が言った通り。
急がないとヤバイと思うんだ。
だから
ガツガツ行くことに決めた。
「離してっ、兄ちゃん!」
バダバタと暴れる李桜をきつく抱き締める。
しばらくすると、諦めたのか、李桜は何もしなくなった。
大人しく座っている李桜が可愛くて、俺は思わずニヤけた。
「李桜」
「っ、なに?」
「なんで拗ねてるの?」
図星なんだろう。
李桜の肩が少し跳ねた。
「李桜、答えて?」
李桜の耳が赤く染まっていく。
この体勢だと、顔が見れないのが残念。
けど、見てたら俺、李桜のこと襲いそう。
できるだけ優しく言うと、李桜は大抵のことは答えてくれる。
それを知っているからやっている俺は、かなりズルイと思う。

