昨日決めたこと。


今日からはちゃんと、華恋に普通に接するように努力すること。


兄ちゃんのことなんて気にしないこと。


勉強に集中すること。


この3つ。


そのうち重要なのは、華恋のことと兄ちゃんのことかな。


華恋は、性格がすごくいい。


優しいくて、男女共に彼女を嫌う人のほうが少ない。


絶対に悪口を言わないし。


俺だって、かれこれ一年くらい華恋に冷たい態度をとってきたけど


華恋は俺のことを一度も悪く言ったことがない。


会えば毎度挨拶してくれる。


…なのに俺、けっこう酷いよな。


今さら反省。


別に、華恋が嫌いなんじゃない。


…兄ちゃんが、華恋と楽しそうにするのが気に入らないだけ。


兄ちゃんの隣に当たり前のように来るのが嫌なだけなんだ。


…俺って、ブラコンなのかな?


まぁ、大好きなのは自覚してるけど。


こんな完璧な兄、そうそういない。


「李桜、俺の顔になんかついてる?」


見つめているつもりはなかったけど、兄ちゃんは不思議そうに俺の顔を見てきた。


「ぃ、いや。別に…」


「そう?」


兄ちゃんの顔なんか見慣れてんのに、なに見られたくらいで動揺してんの、俺。


兄ちゃんと30センチの距離を保ちながら、もう桜が全部散ってしまいそうな木を見る。


道には花弁がびっしり落ちていて、コンクリートなんて見えないくらいだ。


昔は、当たり前のように手を繋いでたのに


今はこの距離が当たり前。


これからもずっと、俺と兄ちゃんはこの距離。


…それか、これより離れる。


「りーおっ!」


「っ?!」


いきなり兄ちゃんに後ろから抱きつかれて、俺はよろけた。


…な、え…?


なにやってんの、兄ちゃん。


後頭部に頬を擦り付けてくる兄ちゃんに、俺は戸惑うことしかできない。


歩き続けるわけにもいかず、いったん足を止めた。