坂口さんにはあの告白した日のことをあまり覚えていないと嘘をついた。
でも本当は、朦朧とする意識の中でそれに頼るように言ってしまった言葉や行動を、今でもハッキリと覚えている。

たぶん坂口さんも俺が嘘をついているってわかってるだろうけど、
触れてしまえばまた離れていく気がして、何もなかったかのように振舞ってきた。




坂口さんは、俺のこと…
どう思ってるんやろ。

二人きりの今なら…聞けるかな。




「なー、坂口さん」

「何?」


「聞きたかったことがあるねんけど…」

「…うん?」



「坂口さんは、俺のこと…」



ドドーーン……




「…え?」


「ううん。
やっぱなんでもない」



やっぱり、いいや。
今こうやって隣におれるだけで充分やわ。