「ごめん…坂口さん。
俺、松田さんから聞いた。
俺が転校する一年前に起きたこと」
「…」
「大谷くんのこと…全然知らん俺が言うのはおかしいかもしれへんけど、
絶対こんなこと望んでへんと思う。
坂口さんには、笑ってて欲しいと思う」
俺がもし、そうなっても…
きっと笑ってる顔を見てたいと思うから。
「'幸せになれない'って…
そんなこと言ってたら怒られるで?
自分のせいで大事な人が泣いてるなんて、
それ以上に辛いことはないよ。
意地でも幸せにならな…大谷くんの分も」
「……」
「だから…
今日は目一杯泣いて、これから少しずつ彼のために笑顔になっていこう」
坂口さんは小さく頷いて、
俺の肩に体を預けてくれた。
体を震わせ、声を殺しながら泣く坂口さんの哀しみを全身で感じて、
溢れ出しそうになる涙を堪えながら
彼女が泣き止むまでずっと、
抱き締め続けた。
