「アハハハ」
近くで誰かの笑い声がする。
その声がこっちに近づいてくる。
「わ、私は大丈夫ですっ…
ごめんなさいっ」
慌ててその場を離れようとした。
…けど、
先生がそれを許してくれなかった。
'あの時'みたいに
手を離してくれなかった。
先生は落としてしまった優と私の鞄を拾うと、私の手を引っ張って近くの空き教室の中に入った。
外からの光が少ししか入らない
薄暗い教室。
薄っすらと見える先生の顔は、切なそうに、
だけど真剣に私を見つめている。
「…先生?
本が……きゃっ…」
廊下に散らばったままの本を気にする私を、先生は何も言わずに抱き寄せた。
