触れるだけのキス。
ゆっくりと唇を離すと、
苦しそうだった坂口さんの表情が
和らいでいる。
もう一度触れたくて
再び顔を近づけたとき、
バタンッ…
屋上の扉が閉まる音がした。
その音で理性を取り戻した俺は
恥ずかしくなって坂口さんから離れる。
だけどその一瞬の恥じらいも、
柔らかくなった坂口さんの表情を見ているとすぐに消えた。
側に居たくてまた彼女に近づく。
そして隣に座って、
同じように壁にもたれる。
「…つめた」
ほんの少し触れた指。
さっきのキスでどこか吹っ切った俺は
坂口さんの手に自分の手を重ねる。
そして温もりを分けるように、
華奢な柔らかい手を優しく包み込んだ。
