お腹が空いているのか、小さな鳴き声をあげながら少しずつ近づいてくる。
アタシの様子を伺いながら
ゆっくり、ゆっくりと。
目の前まで来て、その猫が花を踏んでしまいそうになったので
それを阻止するように猫を抱きかかえた。
「…ねぇ、見て。
ここに小さな花が咲いてるの。
あなたが頑張って生きてるように
この花も頑張って生きてるんだよ。
絶対踏んだらダメ」
そう言って猫を撫でると、
アタシの言葉を理解してるのかしてないのか、顔を舐めて甘えてくる。
「フ…くすぐったいよ」
ドサッ
突然後ろから何かが落ちる音がして
驚いて振り返った。
え…
「…清水君…?」
そこには、鞄を足元に落として、アタシを見たまま立ち尽くす清水君がいた。
