「…やっぱり愛子のとこ行こうかな」
「え」
坂口さんが立ち上がって歩き出す。
「…っ」
けど、すぐに立ち止まって顔をしかめる。
「まだ気持ち悪いんやろ?
ココ座っとこ」
…もうちょっと2人で居たいし。
連れ戻してもとの場所に座らせる。
小さく丸まって座る坂口さん。
「あ、上着貸すわ」
坂口さんは首を横に振りながら
「…クシュン」
と小さなクシャミをした。
…かわいい。
坂口さんの肩に上着をかける。
「なー、
…触っていい?」
「…い…嫌だ」
抱きしめたくなる気持ちを抑えて
俺は坂口さんの背中を優しく撫でた。
「こうしたら
ちょっと落ち着くんちゃう?」
「…」
坂口さんの表情はよく見えなかったけど
少しだけ笑っているように感じた。
