坂口さんの側にゆっくりと近づく。
気配を感じた坂口さんが顔を上げた。
「…」
坂口さんは少しだけ驚いて
不思議そうな顔で俺に尋ねてくる。
「…なんでここにいるの?」
「いや、それは俺が聞きたいねんけど」
俺は坂口さんの前にしゃがんだ。
やっぱり顔色悪いな。
「何でここにおるん?」
「…なんか押されて、いつの間にか」
「俺の服握ったの坂口さんやろ?
もっと強く握ってくれてたら
俺が手掴んで引っ張ったのに」
「…うん」
「しかも自ら手離したやんな」
「…」
「一人でおったらさっきみたいに
変な男に声掛けられるで」
「…大丈夫」
「女の子やねんから
男の力には敵わんやろ」
「…アタシ、そんな
可愛らしい女の子じゃないから」
…確かに。
松田さんのときみたいに
助けんでもいけたけど…
