「商店街のさ、お祭り行かない?」

夏期講習の帰り道。誘って来たのは幼馴染みの彩。


特に断る理由も無かったので、近くの児童公園で待ち合わせをしてその日は別れた。


別れるって言っても家は20メートルぐらいの距離だ。


当日、俺は約束の時間に児童公園へと走った。
理由は、遅刻したから。


児童公園へ着くと彩はブランコに座りながら携帯を見つめていた。


「遅れてごめん!」


息が切れたまま顔の前に手を合わせ謝る。
顔を上げるとちょっと拗ねた様子の彩がいた。


「まぁいいや、早く行こ!」


謝るのに必死で気付かなかったが、彩はいつもよりおしゃれをしていて、いつもより綺麗だった。


歩き出すと、何故か少し離れた彩を夕日が照らし、より一層綺麗に見えた。
どうやら俺は彩に惚れてたらしい。

暗くなって来た空、遠くから聞こえる祭囃子が心地いい。



商店街に着くといつも開いている店は閉まっていて、その店先に出店が並んでいた。


「ねぇ、こっちこっち!」

俺の袖を掴んで真っ先に走ったのは射的の店。


優しそうなおっちゃんに300円を渡し弾を3つ貰った。


「これどうやって付けるの?」

弾の付け方が分から無いらしい。

「ここ引いて、弾差し込むだけ」

「あぁ!なるほどね〜」

パンッッ

外れた。

「あーあ」

「次当てるし。」

パンッッ

また外れ。

「はぁー、次最後じゃん」

パンッッ

外れ。

「あっはははは!」

思わず俺は大笑い。
膨れた顔の彩をなだめた。


「はい、残念賞」

おっちゃんから渡されたのは6本入りの線香花火。

「よっしゃ、あたりじゃん」


俺がそう言うと彩の機嫌も直った様子だ。


次にやったのは400円のクジ。
案の定一番下の6等だったが、渡されたのはおもちゃのペアのピンキーリング。
一つ貰って顔を見合わせて照れた。



「おなかすいたー」

「飯買おーか。何がいい?」

「焼きそば!」


人ごみを分けて焼きそばを2つ買うと、人が少ない河川敷のベンチに座った。


「いただきまーす」
「いただきます」


焼きそばを頬張る彩。
めっちゃ美味しそうに食べてる。


「ごちそーさま」
「ごちそうさま」


もうその頃の空は真っ暗で、携帯の時計には20:25と表示されていた。


「そろそろ帰ろっか」

「えー、もうちょっと居たい」

「遅くなったら親心配するっしょ」

「うん...」


そう言い祭りを後にした。


「あ、花火どうする?」

「公園でやろーよ」


コンビニでライターを買い待ち合わせ場所だった児童公園の砂場にしゃがんだ。


シュー...パチパチッ


花火は火薬が燃える音と共に彩を淡く照らした。


「どっちが長く持つか勝負ね!」


そう言い無邪気に笑う彩に告白する事を決意した。


パチ....パチパチッ


「....あのさ...」

「んー?なに?」


「"好き"」


2つの花火の明かりが落ちて辺りが真っ暗になる。


月の光でうっすら見える彩の目には涙が溜まっていた。


「うちも...!」


ふわっといい匂いがして抱きつかれた。

俺の方からもぎゅっと抱きしめてみる。


花火の残りは....また今度やろう

ずっとこのままでいたいから。